読書録 コンテンツ
沢木耕太郎 深夜特急など
ブックオフで見つけた「一瞬の夏」を途中まで読んでいたら、「深夜特急」にまつわる些細な思い出がフラッシュバックした。
当時、大阪府東部の助務担当をしていて、A社の店の改廃(要するに、店主の馘首)に立ち会ったときのことだ。
クールに事務処理を進めるA社の担当員の横で、私は改廃される店主の顔をぼんやりと眺めるしか能がなかった。やがて、処理が終わり、A社の担当員は、馘首された店主に向かって、「この後、仕事は見つかったの?」と気軽に尋ねたりした。
たぶんその時だろう、この仕事に違和感を感じたのは。帰りの京阪線の中で、A社の担当からいろいろ話かけられたが、どうにもやりきれない思いで、生返事をしていたら、いつのまにか無視されていた。A社担当は読書を始めたのだ。
それが、当時話題になりつつあった「深夜特急」だった。とたんに親近感らしきものを覚え、「それ、今売れてますよね」などと話かけたのだが、もう溝は埋まらなかった。
その後、私の担当員という業務に対するスタンスは、単なる「数字」「お金」でしかなくなり、だんだんと色んなことに手を染めていったのだ。破綻するまでに長い時間はかからなかった。